今ここにあるもの

「大切なのは、ワインにしてもチーズにしても『いま』『ここ』にあるものをキッカケに話を始めます。」
(「人を動かす秘密のことば」前田知洋著 日本実業出版社 125ページより


人を動かす秘密のことば


「手品」という文字は「手が1つ」で「口が3つ」から成り立っています。
だから、マジシャンにとって話をするというのは大切な要素なのだそうです。

そして、冒頭の文にもあるように話の上手な人は「いま」「ここ」にあるものをキッカケに話を膨らませていきます。
「何か特別な題材で面白い話をしよう」というのではなく、今、目の前にある題材を上手に加工して話をするわけです。

目の前にスプーンがあっても普通の人にはそれは単なるスプーンです。
でも、話の上手な人は「いま」「ここ」にあるスプーン1本でも面白い話ができるものです。


これって商売でも同じですよね。

私は昔からアイデアマンだと言われてきました。
でも、自分では「アイデア」は出せるのだけれども、
それを「お金に結びつけるのがヘタだなあ」とずっと思っていました。

そして、大したアイデアでもない
普通の企画や商品をちゃんと「お金」に結びつけることができる人がいることにも気が付いていました。

私が20代の頃にお世話になった社長さんはどんなことでも商売にしていました。
何かを見る、聞く、発見すると「これは面白い!」と言って、それを必ず商売として成立させるのです。

私の経験では何かを見て、聞いて、発見して「これは面白い!」と言って、それを実行する人はいますが、それをちゃんと商売の形にして、お金をいう結果を生み出せるようにできる人は極めて少数派です。


そして、アイデアは出せるけど商売に結びつけることができなかった自分を含めた大勢の人と商売の上手な少数の人は何が違うのだろう?とずっと、考えていました。

そして、その答えの一つが商売の上手な人は
「何か、売れる、特別な商品やサービス」
を探していないということです。

「どこにでもある商品やサービス」を人とは違う視点で見て、
違う売り方をするのです。

商売の上手な人って「いま」「ここ」にあるものを
売り方を考えて「お客さんの得」と「お金」に変換できるのです。

反対に商売のヘタな人は「いま」「ここ」にあるもの以外に、
「どこか」に「売れるもの」があると思っているのです。
だから、ずっと「何か儲かる話ない?」って言いながら
「どこか」に「ある」と信じる「何か特別なもの」を探し続けます。


話の上手な人は「いま」「ここ」にある1本のスプーンから話を膨らませ
周囲の人を楽しませます。
そして、彼はどんな題材であっても上手に話ができます。

1本のスプーンから話を膨らませることができない人は
「何か面白い題材」があっても上手に話はできないものです。

同様に、商売の上手な人は「いま」「ここ」にある1つのアイデアや企画、商品を膨らませて商売にします。
そして、彼はどんな題材であっても上手に商売を作り上げることが多くなります。

だから、有能な経営者は異業界へ移っても
ちゃんと経営ができるわけです。それが経営能力と言われるものです。


「どこか」に「ある」と思われている「何か特別に売れるもの」を探す旅は終わりのない旅です。あなたも私も「いま」「ここ」にある商品やサービスを膨らませて上手に商売を成立させる人でありましょう。